兵庫のカブトムシ亜科

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カブトムシ

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コカブトムシ

 

兵庫にはカブトムシ(Trypoxylus dichotomus septentrionalis)とコカブトムシ(Eophileurus chinensis chinensis)の2種が分布しています。

国内では知らない人間がいない程の知名度を誇る前者に対し、後者は見る機会の少ないマイナーな存在です。

 

コカブトムシ Eophileurus chinensis chinensisf:id:rk_dokke:20240119233251j:image

体長18〜26㎜(性的二型は隠微)

夏が到来すれば見ることのできる種ですが、探すとなると採集難易度の跳ね上がる不思議虫。

読んで字の如くのコカブト(小兜)という和名である為「カブトムシの小型個体=コカブト」という勘違いをしそうになりますが、全くの別種です。

 

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この種は昆虫の死骸を好んで食べるような"肉食性"であり、他種の様に樹液に誘引されることはないものとされています。(少なくとも吸汁する姿は観察できない)

それ故に餌を探し回る為の歩行性が強く、林床や道路、樹上等の様々な場所を徘徊する特性があり、この、特定のスポットに集まらないというのが見つけづらくなる要因の1つだと思われます。

文献では樹液に集まらないとされていますが、実際に見つかる場所は樹液木の付近であることが割合多く感じる為、ひたすらに樹液ポイントを見て回ることが採集への近道となるのかもしれません。

 

県下では専ら南部で採集されているようですが、実際には広く分布しているものと思われます。また、県下の島嶼では家島での生息を確認しています。

徘徊していることが多い本種ですが、外灯に誘引されている個体が偶に見られる他、夜間にフラフラと飛行している個体も目撃している為、飛翔性がない訳ではないようです。

幼虫の発見例はあるようですが筆者は今のところ確認できていません。

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↑2022.6/5 県南 樹洞

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↑2022.6/10 県南 徘徊
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↑2023.5/4 県南 徘徊
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↑2023.6/10 県南 外灯

 

 

カブトムシ Trypoxylus dichotomus septentrionalis

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言わずと知れた超メジャー種。

今でこそ採るのも躊躇う程の遭遇率と個体数を誇るドがつく程の普通種ですが、個人的にはそこまで馴染み深い虫ではありません。

私が小学生時代に通っていたポイントではノコギリやミヤマ等が頻繁に採集できていましたが、当時の本種はそこまで見かける虫でもなく、ここ10年程で見る機会が増えたような気がします。

85㎜を超すような大型の♂も存在するようですが現時点では未確認です。

 

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活動時期は6〜9月頃

樹液の生物代表と言っても過言ではない程の身近さですが、地域によって若干の生息密度の差があるように思います。

県内では全域に生息しているようで、淡路島は勿論のこと家島諸島・沼島にも生息しており、更には、海抜1000mを超えるヒメオオクワガタが生息するブナ帯でも(死骸ではありますが)本種を確認しています。

幼虫もかなり逞しく、積まれた藁や落ち葉の下・側溝に溜まった腐植・倒木の下〜内部・立ち枯れの上部〜内部等から発見できます。

中でも面白いと思った例は、ヒラタクワガタノコギリクワガタの幼虫が巣食う立ち枯れの下にて本種の幼虫が居座っている光景であり、根食い系クワガタが材を分解し、その木屑(食痕)を本種が餌としているという片利共生の様な関係性を時折伺えたことです。

他地域では不明ですが、県南の地域では2022年に夥しい数の成虫が発生しており、一時は1本の樹液木に60頭を超える成虫が付く程の個体数を観察しました。(翌年は普通)

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↑2022.8/12 家島諸島 樹液 ウバメガシ

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↑2022.11/26 県南 倒木材
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↑2022.12/27 沼島 倒木材(アカマツ)
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↑2022.12/31 沼島 立ち枯れ材
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↑2023.1/15 沼島 立ち枯れ材
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↑2023.7/18 県南 樹液 山間部
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↑2023.7/22 県南 樹液 平地
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↑2023.8/8 県南 樹液 山間部
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↑2023.8/14 県南 体色変異

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↑2023.9/24 県北 標高1100m付近 ♀の前胸

 

ここからは2022年の大発生時の写真。

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特別質が良い訳でもない樹液木に溢れんばかりの成虫が蔓延る光景は、もはや悍ましい程です。

 

 

今回は、夏の風物詩カブトムシとその影に隠れるコカブトムシを紹介しました。

7〜8月にクワガタを押し退けて現れるカブトムシと、狙って採るのは難しいコカブトムシ、この解釈は他地方でも大凡同じものかと思います。

コカブトムシに地域変異があるのかは「?」ですがカブトムシの方は微妙にあるようで、最近では、高緯度の個体群になるにつれて幼虫の生育が早くなるという旨の論文が話題になりました。

産地による成虫の形態差については有無があまりはっきりしていませんが、和歌山の紀伊大島の個体群は頭角が発達しないという結論を出す方もおられる為、少なからずあるのかなといったところです。

兵庫県内の変異については今のところ何も分かりません。家島諸島では♀の生息確認のみで♂は未見、沼島では採集幼虫からやたら細い体型の♂が羽化しましたが、母数が少ない為まだ何ともいえません。

 

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↑沼島産カブトムシ♂75㎜ F0

 

下の島嶼にはこれからも訪れると思いますので、数が集まればこの記事に考察と共に情報を付け足すかもしれません。

 

最後までご覧頂きありがとうございました。