3日目〜4日目は隣島での採集です。島名は伏せていますが、勘の良い皆様ならなんら問題はないでしょう。
「無性に某島で採集経験を積みたくなった」というのが、此度遠征を決行するに至った理由(詳細は後ほど説明)であり、ここからが本遠征のメインディッシュと相成ります。
また、某島はGoogleマップでのストリートビュー探索がほぼ通用しない為、実際に現地の環境を伺えるのは上陸後になります。
3日目
唯一の渡船は1日1便であり、乗り遅れることはその場で一夜を明かさなければならないことを意味します。かく言う私も乗船がギリギリだった為、遅刻常習犯特有のダッシュを港にて披露しました。
この渡船は、その日が奇数か偶数かで大幅に発着時刻が変動し、天候に恵まれない場合は欠航も多発する為、訪れる際には注意が必要です。
(???)
大凡2時間程で接岸。定員100名で船内施設も充実しているような旅客船ですが、乗客はなんと私1人でした。
実質貸切だったという情報然り、出航5分前で搭乗用スロープを外していたこと然り、冬季では島民以外の人間が乗ることすら珍しいのかもしれません。
恥ずかしながら船酔いをしていた筆者はその後、船内のトイレでキラキラ祭りを開催するという事故を起こしており、既に限りある体力が削られています。
個人的な話になりますが、「吐く」という行為に昔から異常な程の恐怖心があり、これまで乗り物酔いでは極力吐かないよう我慢してきました(過去形)
長い前置きを経てようやく始まった採集ですが、トップバッターはコガネムシ上科ではなくコイツでした。
アマミサソリモドキ(分布域より種判断)
エイリアンよりエイリアンしてます。強いて言えばフェイスハガーでしょうか(どうでもいい)
とんでもない凶悪生物の様にも見えますが実際、人に向けてやることと言えば酢のような臭いを放つぐらいで、見た目程の攻撃性能はありません。
実は奇蟲にも興味があり、サソリモドキという種を野外で見れたことに感動しました。
ツチヤカブト 3齢幼虫
今回のターゲットの1つ。この島の固有亜種(tsuchiyai)であり、一般によく知られる本土カブトの亜種にあたります。
朽ちた倒木や立ち枯れの地中部から発見でき、1番大きなものでは27グラムを超えていました。
↑注視せずとも食痕が噴き出ている
コガネムシ幼虫
恐らくアオドウガネです。
他に、明らかにハナムグリと分かる幼虫も2頭程出てきましたが、専門外であるが故に種類は分かっていません。
↑帰宅後撮影
オオシマアオハナムグリだと嬉しい。
ネブトクワガタ 3齢幼虫
前半の島と同じくこちらでも本土亜種の括りになっています。この島の環境が適しているらしく、至る所から幼虫の集団が出てきました。
クチノエラブノコギリクワガタ 3齢幼虫
ツチヤカブトと同じく、こちらも固有亜種(kuchinoerabuensis)です。
主に立ち枯れの地中部にいますが、地表材の下部からも発見できます。
活動前の成虫を探したものの見つけるに至らず、あくまでも予想ですが、本土より地中深くで蛹室を作っているかもしれません。
↑土壌に食い込んでいる個体
ミシマコクワ ♀成虫 & 3齢幼虫
前半はヤクシマコクワを採集していましたが、こちらは更に別亜種(mishimaensis)です。
周辺の島嶼にも分布していますが軒並み採集禁止であり、現時点での採集可能な地域はこの島のみに留まっています。
写真の♂幼虫は中々のサイズです。(帰宅後計測4.5g)
現地の温泉は中々の硫黄臭が漂っていますが、個人的には好きな温泉でした。
オリオン座
4日目
AM:9:00頃、村の防波堤にて目を覚ましました。
防波堤の奥には既に釣り竿を掲げている村人の姿があり、寝ている私を横目に奥へと通り抜けたことは容易に想像がつきます。
この日で島を離れる為、出航までの数時間で未見の地を探索しました…と言いたいところですが、結果から言うとあまりの空腹で気分が悪くなり、ものの1時間程で切り上げてしまいました。(食糧は買い過ぎるぐらいが丁度良いという教訓)
結局、最終日に見たのはミシマコクワ幼虫もネブト幼虫だけであり、新たな発見等はありません。
↑脈絡もなく島の方から頂いた屋久島産ミカン
これでだいぶ救われました。
宿泊(ホテル)
遠征終盤にしてようやくまともな宿泊です。
どうせ1日だけならと、本土にいた時の自分が気持ち奮発しています。
もうですね、食にありつけれる有り難さというものを痛い程感じました。他にも色々と運ばれていますが、1枚目のトビウオの唐揚げが1番美味しかったです。
その後も、限界採集生活で溜まった鬱憤を晴らすかの如くホテル内の設備を堪能していました。
後はあれですね、布団で寝れる有り難さ。
5日目 最終日
チェックアウト後はすぐに山地へと向かい、例のアレを狙います。
先に名前を出すと、狙いはオニクワガタの亜種(tokui)であるヤクシマオニクワガタと、もう一つはスジクワガタの亜種(koyamai)であるヤクシマスジクワガタです。
今回は本当に下調べ等をしていない為、適当にアタックしていく訳ですが、鉄則として国立公園内には侵入しないようにしています。
やはりと言うべきか、いるかいないか分からない場所での採集は本当に心細く、知らない山道を1歩1歩進む度に先人達の偉大さを思い知らされます。
デバヒラタムシ 赤枯れ材より
本土にもいるようですが今回が初見です。
この5㎜前後の昆虫からゲニタリアを抜き取って種分別を図る論文を拝見した際は、もはや言葉が出ませんでした。
海抜400m付近
この島には普通のサワガニと特産種のヤクシマサワガニがいるようで、標高で住み分けているとされています。
こちらは標高が低めですので恐らく普通のサワガニです。
海抜600m付近
先に断っておきますと、これがこの山の最初で最後の幼虫です。
その場で「コクワ♀」と判断して埋め戻してきたのですが、今思うとヤクシマスジを期待してキープしても良かったのかなと思います。
山中を歩き通しましたが、場所を外しているのか全くと言って良い程材が見つからず、その後も何も得られないままタイムリミットを迎えました。
と言う訳で、今回の遠征はここで終了となります。
20代に入って初めての離島遠征でしたが、そこそこの収穫が得られているので個人的には成功の部類です。
前書きであった動機の詳細についてですが、昨年あたり、某島という火山島には固有亜種が生息する他に"ヒラタクワガタ"の記録も存在しているという情報を目にしました。その記録も、聞いた話では♀が2頭のみとのことですので公には♂の形態が把握されていないということになります。
そのような理由から某島は「幻のヒラタ産地」と言っても過言ではなく、そこに魅力を感じたというのが今回、私が某島に遠征した理由でした。(結果的には掠りもしませんでしたが)
私個人の話になりますが、私の性格上、元来は電話予約や予定を組み立てるのが極端に苦手な人種であり、知っている番号以外からの電話は出ることすら躊躇するレベルの電話嫌いですが、今回はスケジュール管理と一通りの予約を全て自力で済ませた初の旅行となり、そういう意味合いでは自身の成長を感じられるとても有意義な遠征になりました。
長い記事となりましたが、最後まで読んで下さった皆様には感謝とお礼を申し上げます。また、皆様の採集活動の参考になれるかは分かりませんが、今後とも記事を覗きにきて頂けると嬉しいです。